はじめに:艶は“所作の結果”
靴が整うと背筋が伸び、言葉より先に信頼が届く。必要なのは高価な道具ではなく、続けられる10分。今日は“最小の手間で最大の清潔感”を目標に。
必要最低限のケアキット(まずはこれだけ)
- 馬毛ブラシ(ホコリ落とし用):毎日使う主役。色は靴の色で分けると◎
- 豚毛ブラシ(クリーム伸ばし用):コシがあり浸透させやすい
- 布(クロス)2〜3枚:Tシャツ端切れなどでOK(塗布用/拭き上げ用)
- 乳化性クリーム(補油・補色):靴色に合わせて1色+無色
- ワックス(油性:艶出し):つま先・カカトのポイント使い
- シューツリー(木製):履きジワ伸ばし・型崩れ防止・乾燥促進
- 防水スプレー(フッ素系):仕上げの撥水に
追加であると良い:クリーナー(リムーバー)、コバインキ、デリケートクリーム。
対象はスムースレザー。スエード/ヌバックは別メニューです。

5ステップ・“夜10分”磨き(平日の基本)
所要:10分/汚れが少ない日常メンテ
- ブラッシング(2分)
馬毛で全体を速く長く。ホコリを“払う”イメージ。コバやステッチも忘れずに。 - クリーム塗布(2分)
米粒2つ分をクロスに取り、薄く均一に。トウ→ヒール→側面の順。 - 豚毛で伸ばす(2分)
円を描くように熱と摩擦で浸透させる。ベタつきが消えたらOK。 - 乾拭き・艶出し(3分)
柔らかいクロスで速く往復。“キュッ”とした手応えが出たら艶が乗る。 - 仕上げの撥水(1分)
30cm離して軽く全体へ。風通しで5分放置(就寝中でOK)。
時短コツ:塗りすぎない、色は基本1色、ワックスは平日使わない(時間がかかるため)。

週末の“ご褒美磨き”(+15〜20分で光沢を一段上へ)
- 古いワックス&汚れ落とし:リムーバーを布に少量→優しく全体拭き取り
- デリケートクリーム:乾きが強い部分へ薄塗り→5分休ませる
- 乳化性クリーム:基本と同じ。色ムラは指でスタンプ塗り→ブラシが均一
- ワックス(つま先・カカトのみ):米粒1〜2。水一滴で“水研ぎ”感覚に薄く重ねる×2〜3回
- フィニッシュ:ストッキングや超極細クロスで軽擦り。鏡面は“やりすぎない”が品のコツ

雨の日のアフターケア(敗因は“放置”)
- 帰宅直後:新聞紙を一度だけ詰めて水分を抜く→30分後に外して木製ツリー
- 濡れシワ対策:トウからカカトへ手で皺を伸ばす
- 乾燥場所:風通しの良い日陰(直射&ドライヤーNG)
- 翌日:馬毛→デリケート→乳化性クリーム薄塗り→豚毛→乾拭き
- 白く粉吹き(塩浮き):ぬるま湯タオルで押し拭き→完全乾燥後に通常メンテ
濡れた翌日は休ませる。最低24時間はローテで別靴を。
休日は“コードバン”を愛でる(鏡のような艶を、静かに)
- ブラッシング:馬毛のみで充分。強いリムーバーは避ける
- 保革:コードバン専用 or 無色を米粒1で薄く
- 艶出し:ワックスは極少量。水気は最小。毛羽立ちは乾拭きで寝かせる
- 雨NG:水染みが出やすいので防水スプレー前提。天候次第で履かない勇気
トラブル別・即答チャート
- テカらない:クリーム多すぎ→一度乾拭き+薄塗りで再チャレンジ
- ムラになる:塗布量を揃える→豚毛で熱入れを増やす
- コバが白い:コバインキで補色→乾拭き
- キズ:色付きクリームで点置き→叩き込み→全体ぼかし
- 臭い:ツリー常用+陰干し。内側は除菌ミストを軽く
収納とローテ(清潔感を持続させる仕組み)
- 木製シューツリー常用:履いたら即ツリー
- 24〜48時間休ませる:汗を乾かし、シワを定着させない
- 下駄箱:風通し+乾燥剤。梅雨は除湿機
- 携帯ケア:出張用にミニ馬毛ブラシ+無色クリーム+布をポーチに
所作のコツ(見た目が2割増しになる)
- 椅子に座り、膝上で作業:安定すると動きが美しい
- ブラシは“長いストローク”:細かく動かさない
- 布は指に巻き、面を一定に:艶の方向が揃う
- 手を止めずに流れるように:作業リズム=大人の雰囲気
よくある質問(FAQ)
Q. 色付きと無色どっちが良い?
A. 基本は靴色に合わせた色付き。色が読めない場合や多色運用は無色を基準に。
Q. クリームはどのくらいの頻度?
A. 平日ブラッシング中心、2〜3週間に1回薄塗りで十分。多すぎは劣化の原因。
Q. 新品は履く前に何をする?
A. ツリー装着→ブラッシング→薄く保革→防水。初回から“履きジワ”予防。
まとめ:足元が決まると、言葉が整う
毎晩10分の積み重ねは、翌朝の自分を裏切らない。艶は清潔感と継続の証明。まずは今夜、ブラシを手に。


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