家族から返事がない。そのとき、あなたはどう動く?
平日の午後2時。
仕事中、突然の大きな揺れ。机の上の書類が落ち、スマートフォンには緊急速報。
揺れが収まり、真っ先に気になるのは家族のことだ。
妻は自宅だろうか。子どもは無事か。離れて暮らす年老いた親は大丈夫だろうか。
電話をかけてもつながらない。LINEにも既読がつかない。
「よし、車で帰ろう!」
気持ちは分かる。私だって、同じ立場ならそう考えるかもしれない。
しかし、その判断が本当に家族を守る行動なのだろうか。
今回は辺境のおじ様として、仕事中の大地震を想定し、50代の私たちが家庭で決めておきたいルールを考えてみたい。
私が困るのは「連絡できない、その次」だ
普段なら、家族への連絡は電話かLINEで十分だ。
ところが、大地震では通信が混雑し、停電や設備の被害で連絡できなくなる可能性がある。
問題は、電話がつながらないこと自体ではない。
「つながらなかったら、次にどうするか」を決めていないことだ。
夫婦で別々の職場にいる。子どもは学校や外出先。高齢の親は自宅。
家族がそれぞれ違う場所にいると考えるだけで、確認すべきことが随分増える。
50代ともなれば、守りたい相手が一か所に集まっているとは限らないのである。
最初に失敗しそうなのは、とにかく帰ろうとすること

ここで一つ、地震発生後の行動を想像してみよう。
電話を何度もかける。返事がない。落ち着かず車に乗る。
ところが道路は大渋滞。信号機も正常に動いていないかもしれない。
ようやく自宅付近まで来ても、道路が通行止めになっている可能性だってある。
2026年版の内閣府防災白書でも、大規模地震の際は「むやみに移動を開始しない」という一斉帰宅抑制が重要とされている。
特に発災後72時間は救命・救助活動にとって重要な時間だ。
もちろん、今いる場所が危険なら安全な場所への避難が優先となる。
ただし、安全な職場などにとどまれるのであれば、帰宅を急がない選択も必要だ。
家族を守りたい気持ちと、今すぐ帰るべきかどうかは別問題。
これは、私自身も覚えておきたい教訓である。
私なら家族会議で決めたい「5つの約束」

そこで提案したいのが、10分間の家族防災会議だ。
難しい話は必要ない。夕食後、お茶でも飲みながら次の5つを決めておく。
① 最初の連絡方法
まずはLINEなどで「無事・現在地・これからの行動」を短く送る。電話がつながらなくても、通信状況によってはメッセージを送れる場合がある。
② 連絡できない場合の予備手段
災害用伝言ダイヤル「171」や、インターネットの災害用伝言板「web171」を利用する。
171は音声案内に従って録音・再生する仕組み。web171は電話番号を使って伝言を登録・確認できる。
どの電話番号を共通の確認先にするか、家族全員で決めておこう。
③ 集合場所と避難先
自宅が安全とは限らない。
自治体のハザードマップを確認し、災害の種類に応じた避難場所と、そこが使えない場合の候補を確認する。
④ 帰宅できない場合
職場が安全であれば無理に帰宅せず、会社の指示や自治体の情報を確認する。
帰宅を開始する条件も家族で共有しておきたい。
⑤ 子どもや高齢の親への対応
子どもについては学校の引き渡しルールを確認。高齢の親については、近隣の親族や支援してくれる人との連絡方法も相談する。
これだけでも、家族が取るべき行動を具体的に考えられる。
一度試して気づけることがある
ルールは作るだけで終わらせたくない。
例えば、休日に「今から地震が起きた設定で連絡してみよう」と家族で練習する。
安否メッセージを送ってみる。171の利用方法を確認する。集合場所を地図で調べる。
NTTの災害用伝言サービスは、毎月1日・15日などに体験利用できる。
実際に操作してみれば、家族の誰が何を知らなかったのか確認できるはずだ。
紙に書いたルールが、使えるルールになっているか。
私はそこが一番大切だと思う。
50代の私たちにすすめたい理由

50代は、家庭でも職場でも責任を背負うことが多い年代だ。
だからこそ、何でも自分一人で解決しようとしない方がいい。
家族全員が自分の安全を確保し、互いの居場所を知らせられる仕組みを作る。
それも立派な大人の仕事ではないだろうか。
注意したいこと
この方法は万能ではない。
通信手段がすべて使えない場合もある。津波や火災、建物倒壊の危険があれば、安否連絡より避難が優先だ。
また、子どもの年齢や家族の健康状態によっても必要な対応は異なる。
家庭の状況に合わせ、無理のないルールを作ってほしい。
最後に|帰らない勇気も、家族への思いやり
家族を守るというと、何かあれば真っ先に駆けつける父親を思い浮かべる。
しかし、本当に頼れる大人は、慌てず状況を判断できる人なのかもしれない。
高級な防災グッズをそろえる前に、家族で10分だけ話をしてみる。
「もし明日、仕事中に大地震が起きたら、どうする?」
そんな何気ない会話が、家族を守る備えの第一歩になる。
イケおじの条件に、**「いざというときに冷静な男」**を一つ追加しておこう。
もっとも、普段から冷静でいることが、私にとっては一番難しい修行なのだが。
参考資料
著者について|辺境のおじ様
地方都市で暮らし、仕事や家庭、健康、趣味と向き合いながら、50代からの日常を少し豊かにする知恵を発信しています。
防災の専門家ではありませんが、働く50代男性の立場から、公的資料を参考に、暮らしの中で取り入れやすい備えを考えています。
本記事は地震を想定した事前シミュレーションと個人的な提案です。実際の被災体験や家族での訓練結果を記録したものではありません。
